『異類婚姻譚』

きのう、本谷有希子著『異類婚姻譚』を読み終えた。表題作もさることながら、『<犬たち>』『トモ子のバウムクーヘン』『藁の夫』などの短編も、ざわざわとした不穏な空気がまとわりつき、読後のなんともいえないざらっとした感触に思わず顔をしかめた。

本谷有希子作品の、こういう、読者を置いてけぼりにする加速度がすきで、わたしは彼女の作品を読んでいるのかもしれない。『異類婚姻譚』は幻想文学的な魅力があり、読み進めてゆくうちに頭がくらりくらりとしてくる。理解しようとしても理解ができない、ただ、ざわざわとした音に耳をかたむけているうちに、物語は静かな終焉を迎えているのだ。

けっして愉快ではないけれど、どこか喜劇的で、痛快ともいえる。あのラストが意味するところは、果たして。

 

引き続きざわつく物語が読みたくて、次は吉田知子の『お供え』を読む。

ざわざわ、ざわざわ、と背筋を這う感覚が、いまのわたしには必要な気がして。