ありがとう世界

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とうとつに、むかしのもろもろ、を思いだして羞恥に見悶えていた。とんでもなく些細なこと、どうしようもなくくだらないことばかりしてきたなあと思う。恥ずかしげもなく。でも、当時はそれが精いっぱいだったんだよな、とも思うのだ。

わたしは、たぶんわたしは、わたしが世界でいちばん不幸で、かあいそうな人間でありたかったんだろう。つらいね、しんどいね、かあいそうだねって言われることで、じぶんの中にある黒くてどろどろした感情の上澄みを、必死で掬い上げようとしていた。そう言われることでああわたしはかあいそうなんだそういう立場なんだって、思って、現実より数歩後ろを歩くことができた。そしてそれは何よりの安堵をわたしにもたらした。

いまはもう、じぶんのことをちいともかあいそうだとは思わない。不幸だとも思わない。生きてれば、苦しいこともつらいこともあって、むつかしい壁にもぶっつかって、でも、生きてるじゃん、それだけでエラいじゃん、って、思えるようになった。誰にも、かあいそうだと言われなくても、へいきになった。

心が、ずいぶんと軽くなった。

幸いにしてわたしは周囲の人々に恵まれている。いろいろあったけど立ち直れたのはわたしのことを必死で支えてくれた人たちのおかげで、わたしはただぼうぜんと突っ立ってただけだ。とほうもない暗闇の中で。

羞恥の具体を書こうと思ったけどあまりの恥ずかしさにゆびが止まったので、ここまでにしておく。

わたしはいま、幸福であること。ほんのすこしもかあいそうではないこと。たくさんたくさん傷ついて、傷つけて、いまがあること。ちゃんと噛みしめて生きていこう。

ありがとう、わたしの世界。